「SIer」という言葉は、IT業界でよく耳にするものの、その具体的な意味や役割については意外と理解されていないことが多いかもしれません。この記事では、SIerの業務内容やシステムエンジニア(SE)との違いについて、詳しく解説します。
SIerとは?
SIerとは、お客様のビジネスに最適なITシステムを設計し、構築する、いわば「IT界の建築家」のような存在です。 SIerは、お客様のニーズをヒアリングし、最適なシステムを設計、開発、導入、そして運用まで、一連のプロセスをサポートします。まるで、パズルのピースを組み合わせて一つの絵を完成させるように、様々な要素を組み合わせて、お客様にとって最適なシステムを構築します。SIerは、単にシステムを構築するだけでなく、お客様のビジネスを成功に導くための強力なパートナーであり、売上アップや業務効率化など、お客様が抱える様々な課題を解決するためのソリューションを提供します。
言葉や呼び方が類似しているため、SIやSIerなどが混同されて使われることもしばしばですが、細かな違いは図の通りです。端的に表現をすればSIerは「システム開発を請け負うIT企業」ということになります。このほか、企業やエンジニアによっては、SIerのことを「システムベンダー」や「ITベンダー」と呼ぶこともあります。
Sler 読み方は「エスアイアー」と読み、一言でいうと「システムを構築する会社のこと」を指します。実際には、SIerはクライアントのビジネスや業務プロセスに合わせたITシステムを設計し、開発・運用・保守までを一貫して手掛ける企業です。システム開発における全ての工程を担い、顧客のニーズに最適なITソリューションを提供するのがSIerの主な役割です。
SIerとSEの違い
読み方 | 意味 | |
---|---|---|
System Integration | システムインテグレーション | システム開発や運用などを請け負うサービス |
SI | エスアイ | システムインテグレーションの略称 |
System Integrator | システムインテグレーター | システム開発や運用などを請け負う企業 |
SIer | エスアイヤー | システムインテグレーターの略称 |
SE | エスイー | システムエンジニアの略称 |
SIerとSEは、よく混同されがちですが、役割が異なります。
- SIer営業とは「ITに関係するコンピューター技術」を商材として販売を行う営業手法を指します。その性質から「システム営業」や「ソリューション営業」などとも呼ばれています。SIerを提供している企業では単にシステムを開発して提供するだけでなく、「システムの運用および保守」、「自社リソース(エンジニア)の外部派遣」、ITに関するアドバイス(コンサルティング)」といった業務を同時に請け負っているケースがあるのもポイントです。
- SEの仕事は、顧客の要求から仕様を決定し、大まかな設計をするまでの情報システム開発における上流工程を担当します。その際、予算や人員、進捗管理などのマネジメント業務も大切な仕事です。ただし、企業や開発チームによってSEの仕事内容は異なることもあります。SEが担当する上流工程は「要求分析・要件定義」「基本設計」「詳細設計」「テスト」などの業務です。
つまり、SEはSIerの一員として、システム開発の具体的な業務を担当しているということです。
なぜSIerが必要なのか?
現代のビジネスにおいて、ITシステムはなくてはならない存在となっています。しかし、自社で全てのシステムを開発・運用するのは、コストや専門性の面から難しいケースが多いです。SIerは、その専門知識と経験を活かし、お客様のビジネス課題を解決するための最適なシステムを提供します。
例えば、SEは顧客の要望に基づいてシステムを設計・開発するエンジニアで、SIerはそのシステム開発全体を担当する企業という立場になります。
SIerは、顧客のニーズに応じて、システム開発に関するあらゆる業務を請け負う企業であるため、その担当範囲は非常に広範囲にわたります。システム開発には高度なITスキルが必要で、多くの企業は自社でエンジニアを抱えていないため、SIerがシステム開発を代行することが多いです。これは、企業間取引(BtoB)において非常に重要な役割を果たします。
また、SIerが担う仕事の中で、複数のSIer企業が協力して作業を進めることもあります。大手SIerが上流工程(要件定義や設計)を担当し、下請けのSIerが開発や運用(下流工程)を行う形がよく見られます。
SIerの種類
SIerは、その規模や業務内容に応じて様々な種類に分かれます。例えば、大手SIerは多くのクライアントを持ち、広範囲なシステム開発を手掛ける一方で、中小規模のSIerは特定の分野や業界に特化した開発を行うことが一般的です。依頼するシステムの規模や内容に応じて、SIerを慎重に選定することが重要です。
SIer一例としては下記です。
SIerとは、お客様のビジネス課題を解決するために、最適なITシステムを設計・開発・導入し、運用までサポートする企業のことです。例えば、新しいECサイトを立ち上げたいと考えている小売企業の場合、SIerは、お客様のニーズをヒアリングし、最適なECサイトを設計・開発し、運用までサポートします。
SIerの仕事は、家を建てる大工さんに例えることができます。お客様(施主)が「家を建てたい」という要望を持ってSIer(大工さん)に相談し、SIerは設計図を作成し、材料を調達し、実際に家を建てるのです。
SIerの仕事は、システムの設計から開発、運用まで幅広い範囲にわたります。お客様のビジネスを成功させるために、SIerはなくてはならない存在です。
SIerで働くために必要なスキル
SIerで働くシステムエンジニア(SE)には、以下のようなスキルが求められます。
- コミュニケーション能力: SIerは、クライアントやユーザーの要望や課題を正確に把握し、適切な提案や解決策を提示することが求められます。 そのためには、クライアントやユーザー、チームメンバーなど多くの人と関わる必要があり、コミュニケーション能力や協調性が必要です。コミュニケーション能力が高い人は、要望や課題を正確に理解し、適切な提案や報告ができるでしょう。 チームメンバーと協力してプロジェクトを進めるためには、円滑な情報共有や意見交換ができることが必要とされます。
- ITに興味がある人: SIerは、IT業界で働きます。そのため、ITに興味がない人にはおすすめできません。ITは常に変化している分野です。 よって、SIerは、自ら学ぶ姿勢やチャレンジ精神が求められます。また、さまざまなIT技術やツールを使って情報システムを構築するため、ITスキルが必要です。プログラミング言語やデータベース、ネットワーク、セキュリティなどの基礎知識や実践能力が求められます。 また、最新のITトレンドやニーズに対応できるように、常に学習意欲や好奇心を持っていることも重要です。
- 論理的思考力: SIerは複雑なシステムを設計や開発することになります。そのため、論理的に考える力や分析する力が必要です。 SIerは、複雑な問題を分析して原因や仮説を導き出し、検証結果をもとに最適な解決策を選択することなどが求められます。論理的思考力が高い人は、問題を分析して解決策を考えたり、自分の意見や根拠を明確に伝えることができるでしょう。 また、自分の考えや提案を論理的に説明したり、他者の意見に対して論理的に反論したりできることも必要です。
- 柔軟性を持ち合わせている人: SIerは、プロジェクトの進行中にさまざまな変化やトラブルに直面する可能性があります。そのような状況においても、パニックに陥らずに冷静に対処し、柔軟に対応できることが必要です。 また、自分の考えや方法に固執せずに、他者の意見やフィードバックを受け入れたり、新しいアイデアや手法を試したりすることが求められます。
システム開発を依頼する際には、SIer企業のホームページを参考にし、その事業内容や過去の実績を確認することが重要です。予算や開発期間を見積もり、複数のSIer企業を比較して最適な企業を選びます。特に、IT知識が少ない担当者の場合は、SIer検索サイトやマッチングサービスを活用することで、最適な企業を見つけやすくなります。
まとめ
SIerはシステム開発において非常に重要な役割を担う企業であり、SEはそのシステム開発を行うエンジニアです。SIerはシステム開発全体を統括し、システム設計から運用までの幅広い業務を請け負います。SIerの役割や仕事内容を理解することは、今後SIerに就職したい、またはシステム開発を依頼したい企業にとって非常に重要です。
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